仕事でも恋愛でも、うまくいかなかったときに「ご縁がなかった」と言いますよね。やわらかくて便利な言葉ですし、僕も鑑定の場で使うことがあります。
ただ、ご縁を運とタイミングだけのものにしてしまうと、こちらからできることが何もなくなってしまいます。実は仏教には、ご縁を自分の側から結んでいくための方法が、はっきり四つにまとめて残されているんです。四摂法(ししょうぼう)といいます。
今日はこの四摂法についてお伝えしますぞ。難しい修行の話ではなく、今日の会話から使える四つです。
四摂法とは、ご縁を結ぶ四つのふるまい
「摂」という字には、抱き寄せる、取りまとめるという意味があります。人と関わるときの四つの態度をまとめたものが四摂法で、四摂事(ししょうじ)とも呼ばれます。
中身はこの四つです。
- 布施(ふせ) 差し出すこと
- 愛語(あいご) あたたかい言葉をかけること
- 利行(りぎょう) 相手のためになることをすること
- 同事(どうじ) 相手と同じ側に立つこと
日本では道元禅師が『正法眼蔵』の中に「菩提薩埵四摂法(ぼだいさったししょうぼう)」という一巻を立てて、この四つを丁寧に説いています。八百年ちかく前の文章ですが、書かれていることは驚くほど具体的です。
そして四つとも、相手を変える方法ではありません。全部、自分のふるまいの話です。ご縁は向こうから降ってくるものではなく、こちらのふるまいのあとについてくる。四摂法はそういう立ち位置の教えです。
四つをひとつずつ見ていきます
1. 布施 むさぼらずに差し出す
道元禅師は布施をこう説明しています。
その布施といふは不貪なり。不貪といふはむさぼらざるなり
道元『正法眼蔵』菩提薩埵四摂法
布施と聞くとお寺に納めるお金を思い浮かべますが、もとの意味は「むさぼらないこと」です。自分のところで抱え込まずに、手を開いて差し出す。それが布施です。
ですから、お金や物でなくてもかまいません。席をゆずる。知っていることを教える。時間を少しだけ分ける。笑顔を向ける。どれも立派な布施ですね。
余裕がないときは、どうしても受け取るほうに意識が向きます。これは自然なことで、悪いことではありません。ただ、ほんの少しでも差し出す側に回ってみると、そこから流れが変わりはじめます。
2. 愛語 言葉には天を回す力がある
四摂法の中で、いちばん有名なのがこの一節です。
愛語よく廻天のちからあることを学すべきなり
道元『正法眼蔵』菩提薩埵四摂法
あたたかい言葉には、天を回すほどの力がある。ずいぶん大きな言い方に思えますが、実際に一言で気持ちが立て直された経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。
そして道元禅師は、愛語をこう定義しています。
愛語といふは、衆生をみるにまづ慈愛の心をおこし、顧愛の言語をほどこすなり
道元『正法眼蔵』菩提薩埵四摂法
まず相手を見て、慈しむ心を起こす。そのあとで言葉をかける。この順番が大事なところです。心が先で、言葉があと。ですから、言い回しだけ整えても愛語にはなりません。逆に、うまい言葉が出てこなくても、相手を思って出た一言はちゃんと届きます。
3. 利行 相手のためになることをする
利行といふは、貴賤の衆生におきて、利益の善巧をめぐらすなり
道元『正法眼蔵』菩提薩埵四摂法
相手が誰であっても、その人のためになる工夫をめぐらせること。ここで見逃せないのが「貴賤の衆生におきて」という部分です。立場や肩書きで態度を変えない、という意味になります。
得になりそうな人にだけ親切にするのは、利行ではなく取引です。取引で結ばれたご縁は、条件が変わると切れます。逆に、相手を選ばずに向けた親切は、思ってもみなかったところから返ってきますね。
4. 同事 同じ側に立つ
同事といふは、不違なり。自にも不違なり、他にも不違なり
道元『正法眼蔵』菩提薩埵四摂法
不違(ふい)とは、さからわないということ。相手にもさからわず、自分にもさからわない。この二つが並んでいるところが、同事のいちばん大事な点です。
自分を押し殺して相手に合わせるのは、同事ではなく我慢です。それは長く続きませんし、どこかで無理が出ます。同事は、相手と同じ側に立って、同じものを見ようとすること。相手の上に立って導こうとしないことです。
四摂法が「ご縁」の話になる理由
仏教には縁起という考え方があります。何ひとつ単独では成り立たず、すべては関わりの中で起きているという見方です。
この見方に立つと、ご縁は「ある」か「ない」かの二択ではなくなります。結ばれたり、細くなったり、また太くなったりするもの。だとすれば、こちらから結びにいくこともできるわけです。
四摂法は、その結び方の作法です。差し出す。あたたかい言葉をかける。相手のためになることをする。同じ側に立つ。四つとも、明日いきなり人生を変える魔法ではありません。ただ、続けた人のまわりには、いつのまにか人が残ります。
やらないほうがいいこと
四摂法は、やり方をまちがえると逆に働きます。気をつけたいのは次の三つです。
一つ目は、見返りを数えながらやること。数えはじめた時点で布施は取引に変わりますし、返ってこないときに相手を恨むことになります。差し出したものは、渡した瞬間に手放しておくのがいいですね。
二つ目は、相手の領分に踏み込むこと。よかれと思ってやったことでも、相手が頼んでいないなら利行にはなりません。相手が困っているかどうかは、こちらではなく相手が決めることです。
三つ目は、四つ全部を一度にやろうとすること。四摂法は点数表ではありません。今日はどれか一つだけで十分です。
チクさんの実体験
鑑定をしていると、お話ししているうちに「この人は優しい人なんだな」と感じる方がいらっしゃいます。そういう方は、まわりも素敵な人に囲まれていることが本当に多いんです。
不思議なようですが、順番を考えれば当たり前かもしれません。優しい人のところに素敵な人が集まってくるのではなく、優しくふるまってきた時間が、そういうご縁を少しずつ結んできた。四摂法が言っているのは、まさにこのことです。
僕自身のことでいうと、仕事としてしっかり対応して、心を込めて向き合っていると、お客様からとても感謝していただけることがあります。あれをいただけると、この仕事をまた頑張れるなと感じます。差し出したつもりのものが、思っていたよりずっと大きくなって返ってくる感じですね。
そして、いつでもそうであれるように心がけています。
もうひとつ、僕には決めていることがあります。「先生」と呼ばれたくないんです。呼ばせもしません。
占いを仕事にしていると、先生と呼びたくなる気持ちも分かります。ただ僕は、自分にも欠点や弱点があって、みなさんと同じように生きていると思っています。上に立って答えを渡す人ではなく、同じ側に座って一緒に考える人でいたい。
これがまさに、同事なんだと思います。自分にもさからわず、相手にもさからわない。呼び名ひとつのことのようでいて、ここを崩すと鑑定そのものが変わってしまう気がしています。
まとめ
四摂法について、大事なところをまとめます。
- 四摂法は、ご縁を結ぶための四つのふるまい。布施・愛語・利行・同事の四つです
- 布施は「むさぼらないこと」。お金や物でなく、席をゆずる、笑顔を向けるのも布施です
- 愛語は、まず慈しむ心を起こしてから言葉をかけること。心が先で、言葉があとです
- 利行は、相手を選ばずにその人のためになる工夫をすること
- 同事は、相手にも自分にもさからわず、同じ側に立つこと
四つとも、相手を変える方法ではなく、自分のふるまいの話でした。だからこそ、今日から始められます。
まずは一つだけ選んでみてください。それだけで、まわりの景色は少しずつ変わっていきますぞ。
一緒に開運をめざしていきましょう!
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